魚の夢/
木立 悟
荒れ地に生まれたひとつの風と
荒れ野に生まれた多くの風とが
ひとつの海を奪い合っていた
金の光が
銀に変わるまでの永い間に
水は風に混じり
小さなものたちは生まれた
魂は震えの源を見た
あらゆる刹那の源を見た
夜から朝へと
分かれゆく空の高揚を見た
蝶は眠り
蜥蜴が目覚め
蜥蜴は眠り
鳥が目覚めた
魚だけが目覚めることなく
ずっと眠りつづけていた
波打ちぎわで魚は夢みた
昼も 夜も
いくつもの空の下を歩む
二本足の生きものを
夢みた
夢みた
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