空気/成澤 和樹
そんなに複雑だったっけ?
ボクはただ目の前の噴水を眺めていて、向こう側の空が青かったのを嬉しく思った
爽快なジェットとヒコーキ雲が空間を作って
その映像はシーンの一つのようになった
十年前から毎日、此処では繰り返されている光景で
単純で純粋な時間が流れている
ややこしくしたのはボクだった
白い階段を下る子供たち
昔はボクもその一人だった
ずっとそんな日々が続くと思ってはしゃいでいた
大人になってはじめて分かった
大人になったからこの空間にいられなくなったんじゃないこと
面倒なプライドとか恥とかを知るようになって
自然と遠ざかっていたことを
誰も許可する必要なんてないじゃない
ボクもこの水と空と白い階段を受け取って、味わっていい
魂だけはあの日のままにしておこう
公園で一日過ごすのもいいよ
忘れそうだった空気がそこにあるから
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