此の世の果てのバルコニー(Last Dance)/塔野夏子
 
に入りのもの
そんなことは何故かおぼえている
そして 互いの名前も

とうとう此処まで来たんだね
此処はさびしい
そのさびしさも
静かで それでいてすごく狂おしい
僕らは これを味わいたくて
此処に来たのかもしれないね
何処からも何処よりも遠い場所へ

踊ろうか 僕はそっと囁いた
君は小さくうなずいた

此処に来る前 僕らは何処かで
一緒に踊ったことはあったのかな
思いだせないのが
少しだけかなしいけれど

でもそれでいいんだ
此処は此の世の果てのバルコニーで
僕らは今 きっと誰が見ても息を呑むほど
優美に踊っている
静かで狂おしいさびしさの調べに乗って

踊ろう
いつまでも
踊ろう
時折そっと互いの名を囁き交わしながら

踊ろう
いつまでも
踊ろう
僕らだけが此処にいるそのことに
透きとおってしまいそうになりながら

きっと僕らだからこそ
たどり着いた此の場所で
踊ろう
いつまでも
踊ろう

踊ろう
いつまでも
踊ろう




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