此の世の果てのバルコニー(Last Dance)/塔野夏子
僕の黒い革靴と
君の銀のパンプスとが
白黒市松模様のなめらかな床の上を
並んで踏んでゆく
とうとう此処まで来たんだね
誰も居ない 此の世の果てのバルコニー
数メートル先 白い手すりの向こうには
何も見えない
何も無いから
僕らはどうやって
此処にたどり着いたのだろう
振りむいてもその道はおぼろに霞んでいる
僕らは何故
此処に来ようと思ったのだろう
それも思いだせない
僕らは何処から来たのか……
いろんなことを忘れてしまった
それでいいんだ
此処は此の世の果てなのだから
ただ 僕のダークグレイのスーツ
君の菫色のドレス
それらは互いにお気に入
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