おまえたちは黄色い海の中へとうずもれてゆく/Utakata
一斉に樹の下へと走り始めるが
それでもときどき空を見上げては何事かを叫んでいる)
ここを
世界だという人がいれば
可能性だとも
過去の残骸だとも言う人がいて
それをただ愛せとおまえたちに言う 権利は
誰ひとり持たない けれど
(黄色い海が揺れる)
ほんとうは
夕立を逃れる必要など
おまえたちは少しも持ってはいないのだ
樹の下でじっと待つには
この場所はあまりにも
あまりにも はかなすぎるのだ
この時間はあまりにも
あまりにも 短すぎるのだ
(ひとりずつ
おまえたちは菩提樹の下から走り出てゆく
生温く激しい雨の中で
おまえたちは
おまえたちがここに来る前から知っている歌を唄いながら
笑って地平線のほうへと走り去ってゆく)
時間くらいなら 少しのあいだ
止めておいてあげる だから
世界を愛する 子供たちよ
駆けて
遊べや
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