「少年の月」/ここ
星だけが輝く夜。
一人の少年が、
その手に持つテニスボールを思い切りアスファルトに投げつけた。
ポオォーーーーーン・・・・・
闇に溶け込むほどに高く跳ね上がったボールは一瞬、
乳白色のやわらかい光を発し、消えた。
少年は辺りを見回し、ゆっくりと首を反った。
視界の全てに映る星たちが、
キラリ、キラリと微笑み合い穏やかに見守っていた。
今、少年のかすかに揺れる心の中には、
くっきりと丸い大きな月がいる。
深く息を吸う。
月明かりに照らし出されたアスファルトをしっかりと見つめながら、
夜の闇を裂いていく。
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