まわるかたち/木立 悟
硬い水と硬い石が
大きな球を廻している
緑の陽の下
川へ降る雪
実り落ちる火
空へ空へつぶやく火
流れのなかに立ちどまり
流れの壁を見つめている
岩と声 波紋に沈む
狩りの名残り
青に朽ちて
季節は重なり
火は終わり 鳥は実り
音だけのしずくを聴きつづけている
雪の奥の 砂の拍手
うすく洞のかたちをしている
ひとつひとつに点る明かりが
雨を雨に近づける
光の嘘によろこび悲しみ
雲間の月と雷を数え
いつか指も涙も尽きて
それでも数え 数えつづけて
偶然に触れる偶然は
頬のかたち 舌の熱
離れたときだけ来る銀が
咲かない花に降りつもる
鳥が終わり 火が実り
雨のなかを揺れている
石の音や影の音
廻りつづける球の音
真新しいにおいに照りかえし
水へ水へ手わたされてゆく
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