さくらのきのした/かのこ
冷たいけれど、やわらかくなった四月の夜風が頬にあたる
あなたにもらったこのカシミヤのマフラーももうしまわなくちゃ
消えてしまいそうな、薄紅
二十歳の春が来て、それはあなたと出会って三度目の春で、
もう年を重ねたいとは思わなくなった
はらはらと、花びらが足元を埋めて、焦りは募るばかり
はやく、はやくしないとさくらがおちてしまうよ
どこまで走っても続いてゆく、コンクリートの森で
いつまで経っても追いつくことは、ないのかな
からだにこころが足りないあたしを
認めてほしかったんだ
風が吹く中、散りゆく中を
息が切れるまで飛んでいく夢を見た
けれど足元では、その儚さに見蕩れるばかりだった
あたしが死んだら、どうかこの木の下に眠らせて
からだにこころが足りないあたしを
さよなら
またいつか、どこかで出逢ったら
叶えて、たとえそこが違う世界であっても
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