けれどももしかしたら砂浜のことを忘れているのかもしれない/ホロウ・シカエルボク
 
ものたちがかすかな和音の中でゆっくりとかたちを変える…その動作をどことなく感じているみたいな気分になる、じっとしてそれを聞いていると雨がコーヒーを作っているのだと…少しずつ漂ってくる豆の香りは世界の外からくるのだと、そんな気がして…ミルクを少しだけ入れてってもう言った?洗っているマグカップはいくつある…?次第に雨足は強くなる、アフリカのパーカッションが数百と鳴っているみたいな―響き、エコー
マグカップに口をつけると、濡れた紙のように蒸気が張りつく、ミルクが溶けて…コーヒーは新しい匂いになる、匂いが変わるだけで…新しい飲み物になるのだ、呼び名はそのままで…飲むのはもう少しよそうと思う、せめてミルク
[次のページ]
戻る   Point(1)