ノート(銀砂音)/木立 悟
 


鏡に残る真昼の熱が
道のにおいを解いてゆく
光と光がつくる爪痕
左目から空を切りひらく



午後の川の上をゆく
鳥のかたちをした銀河
流れのない流れの色を
照らすものなく巡り交う
空ではない空の色
冬ではない冬の白



日没の鱗と光の手
葉から空への水流を指す
雲洗う雲洗う煙の羽
熱を避けては円を描く



添うものもない夜の両側
偽の夕べはふたつ倒れて
水たまりに積もる光の埃
海辺の道に降りる鳥たち
砂に隠れた蓋をあければ
銀河の音は駆けのぼる
銀河の音は駆けのぼる




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