会社の飲み会/松本 卓也
 
まだ二十代になりたてだった頃は
自分が周りに溶け込めない原因を
責任転嫁することばかり考えていた

全社会議が終わり、その後は飲み会
いつものように空気を読まない発言と
オチに使われる存在感を活かしながら
それなりに楽しく過ごしていた

狭い座敷部屋に二十人位居たと思う
みんな心から楽しそうに笑っていて
僕だって十分に楽しかった

それでも何故だろうか
僕は浮いているような気がして
思わず後輩に金を握らせて
笑いながら逃げ出した

夜風が穏やかに街を巻いていて
どこからも賑やかな声が漏れている
どんな表情で歩いていたのだろう
軽い調子で声をかけてきた客引き
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