Emの視界/ムラコシゴウ
Emは後ろに座り込んで、新しく買ってきた消しゴムの角を使おうか使うまいか
と
ためらっている。
Emは久しぶりに街に出て、輪郭のぼやけた春の生温い空気に少しだけ辟易する。
エッジの効いた冬が懐かしい
というEmの見解は、
どうやら一般にはあまり受け入れられないらしい。
子どもがペットボトルを放さない。
母親はベビーカーを転がし、遠回りするのが都市の構造だ。
Emは子どもをあやそうとするが、
子どもは鼻の頭に埃をつけたまま、Emの情念を貫いている。
ヴァニティ・フェアー。
Emを求める人は、いない。
緩い風に吹き
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