はじまりの四月、成就された八月。 ☆/atsuchan69
、
けして夢ではなかった。
そして、君といつか歩いた
桜の咲くポトマック河畔へと
不確かな記憶が、僕を
理性の岸へと連れもどす
――花よ、
――花よ、
散る花の
花びら、
花たちよ
すでに溶けはじめた
夢でない世界の、
一匹の狂犬が
海へと向かう埠頭をめざして
ただ、闇雲に走る
三
淡い光のなかで
獰猛な、
犬の額を刺した
素早い弓の矢。
転がる狂犬とともに、
夢でない世界が一瞬に消え、
麗しい君と彼は、桜並木の堤を
のどかな陽を浴びながら
まだ、ゆっくりと歩いている
君は四月。
きっと僕は、八月・・・・
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