あーかいぶ/川口 掌
るほどに激しく続く夕立ち又は灼熱の日差し
散りゆく花は虫達の力を借り交配を終わらせた実りの始まり
繁る葉の奥から送り出され湧き上がるエネルギー
枝先に一つまた一つとぶら下がり次第次第に色づき大地を目指す
梢から梢へと飛び交い駆け回る小さな命が朝日と語り合う
目覚めの時から少しずつ蓄えた力をいまこの時と開かせる
記憶の中から無作為に取り出した思い出を一枚また一枚と宙に放る
忘れ去られる事の叶わぬ目覚めの時からの日々がはらはらと舞いながら
一番深い部屋を目指し少しずつ埋もれていくのかそれとも沈んでいくのか
いつしか取り出すことも叶わぬ奥深くにたまり降り積もる雪が傷跡を覆い隠す
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