龍との生活/角田寿星
 
ぼくは龍と二週間ほど同居したことがある
猫のフクちゃんが何かひらひらした
長さ30cmくらいの紐とじゃれて遊んでいた
それが龍だった

あまりに哀れに干からびていたんで
風呂場で水をかけたら ジュッという凄い音がして
あたりが湯気で見えなくなった
風呂場の入り口で 首だけ出して覗いていたフクちゃんは
バクチクが破裂したかのようにすっ飛んでった
視界がようやく開けると そこに龍が浮かんでいた

以前 飛行機に乗って上空から関東平野を眺めた
平野いちめんにうっすらと灰色の空気の膜がかかっていて
こんなところにぼくは帰るのかと 暗澹たる思いをしたことがある
龍も同じ風景を見
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