二度と羽ばたけない羽なら捨てることもまた飛ぶことだ/ホロウ・シカエルボク
 
も読めなくなった遺書があった
屋上に上がる階段はコンクリートが劣化していて扉が開いていたとしてもそこに出ることは出来なかった
あそこが開いていればすべての配列を組み直すことが出来たような気がする
あそこに続くドアが、あそこに続く階段が閉ざされてさえいなければ
これはきっとずいぶん後からやってくる種類の絶望なのだろう、と認識しながら
引き返すための段差に足を下ろしていくとみぞれが少しずつ止む
寒くなるのか暖かくなるのか判らないけれど
飛び立つ術を知らない雛の前でも
蒸発の様に世界は明日へ流れていくのだ



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