「ふくらんでゆく春」/ベンジャミン
季節のかわり目は
いつもどこか淋しい
風が吹くたびに
しがみついていた桜の花びらは枝を離れ
雨が降るほどに
やわらかな景色がその色を増してゆく頃
たとえば新しい教科書の
空欄に名前を書き込むような
ちょっとした緊張感があったり
たとえば顔ぶれのかわった教室で
知らなかった誰かのことが
ちょっと気になったり
そんなふうに
忙しさの中で
音もなくかわってゆく何かとともに
揺れるあなたの現実があるとしても
それでも
忘れ去られそうなあの
桜の枝の緑の中に
これから色づく実があることを
季節は次の季節へと
こっそり知らせていることを
忘れないでください
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