馬鹿がバカに乗ってやってくる/六九郎
 
おねがい
おねがい
おねがい
おねがい
おねがいします
神を信じない悪党も
何かに祈らずにはいられない
エンジンのかからないバカバイク
セルの付いてないバカバイク

私ははるかに年上である訳だし
揺すられ続けながら静かに思う
汗と鼻水で汚い顔で
精神と右足のバランスを欠きながら
それでもまだあきらめずに私に覚醒を促すこの馬鹿を
果たして乗せてやるべきなのかどうなのか
それほどの義理があるのだらうか

やっと目覚める骨董品
跳ね上がった心拍数と死戦期呼吸のアイドリング
行き渡った動脈血とスラッジ混じりのどろどろオイル
高まりすぎたテンションとクールな佇まい

サドルシートに跨り
ハンドシフトをそっと入れ
フットクラッチをやさしくつなぐと
お互いがお互いを認めようとしなかった
不幸な時間は終わる
悪態は信頼へ
信頼は喜びへ

バカが馬鹿を乗せて走り出す

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