面フクロウ/宇宿一成
 
鼠を捕ってくる
雛のために

木々の根を掘ることで鼠は
さらに土深く、広く根付かせるのだが
ささやかな営みは永遠に中断された

雛は、くちばしとかぎ爪で
鼠を裂くことを覚える
肉塊となった生命を血肉として
生き抜くために
やがて巣立ち、自らの力で狩る日のために

私も覚えた
ふるえる心で
生きるために傷つけることを
だれかの胸の奥深く
猛禽の爪を立てることを

里近くしつらえられた面フクロウの巣を
迂回して人はゆく

貪婪な雛の食欲を満たすために
ふたたび親鳥は翼広げる

森の木々は
土深く根を伸ばしてまっすぐに立ち
静かに見ているばかりだ

           (西日本新聞三月三日付)
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