瑞香 結香 沙丁魚/木屋 亞万
 
砂の底というのは案外やさしいものだな
波を待つだけというのも飽きてきました
俺は波を自分から起こしながら進むからさ
熱心に砂を集めましょう夏の坊主のように


世界を構成する物質のすべてが
小さなちいさな粒になった
牛の骨も雁の羽根も鰯の鱗も
淡い色彩の砂となって零れている

地球が砂丘に埋め尽くされる日に
惑星の名を砂球に変えようと思います
白い珊瑚の粒がそう言ったとき
船の碇は沈丁花の花を咲かせた
零れる香りの粒に砂は春を感じ

積もる話は重なり合うも
噛み合う事はなかった
こぼれる話の核には
いつも少し毒があった

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