さよなら、海/草野大悟
雲のなかで
ねむるように
ちいさな海が死んだ朝
なきがらを
おおきな海に返しに行った。
あなたは
雲の棺をかすみ草でかざり
たいせつに両手にくるんで。
ぼくは
すこしばかり慎重に
車を運転して。
上げ潮に乗って
外洋へと流れていくそれが
ちいさく、ちいさく
波間にとけたとき
あなたの瞳に
涙がいっぱいあふれていた。
ぼくの心にも
涙がすこしあふれていた。
さよなら、海
午前0時になると
いつも回し車を回していた。
誰が見ているわけでもなく
誰に誉められるわけでもないのに
しっかりと
自分の裡のリズムをきざんでいた。
さよなら、海
おおきな海に抱かれて
だいすきだった
ひまわりの種を
おもいっきり
食べるがいい。
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