花魁/vallette
強く濃い香りは輪郭を惑わす
花はいつしか萎れ
風に吹かれて散っていく
抜け落ちた髪の毛を誰が美しいと言うのでしょう
花は咲いているから美しいもの
形も保つこともできず、
自ら求めることもできず、
空を漂い流れる雲になりたいと
何度願ったことでしょう
こう生まれてきたあの日から
私に許された自由はただ一つ
少しでも美しく着飾って
そして強く濃い香りをなびかせる
一人振り向き、二人振り向き、三人四人・・・
皆が私を見ていても、誰も私に近づかない
皆が私を撫でていても、誰も私の名前を知らない
音のない世界で、二人きりの世界で
ただ手をつないでくれる人はいなかった
強く濃い香りは、私に現実だけを連想させた
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