「美しいことに理由はいらない」/ベンジャミン
何かしら書くものだと注意した
するとその生徒はまるでへいっちゃらな顔で
「だって先生、美しいことに理由はいらないでしょ」と
僕はまさに心臓を射抜かれたような衝撃で
返す言葉をなくしていた
下手な言い訳だとはわかっている
けれどそれが間違いだと言い切ってしまうことが
僕はどうにも悪い気がして
それでも、
それでも何かしら書くものだ
僕は何だかちょっとむきになっていたと思う
どうせテスト業者は機械的に×をつけるし
やっぱり先々のことを考えると
答えはしっかり書くものだ
(美しいことに理由はいらない)
下手な言い訳だとはわかっている
けれど
僕はその見事な空白に、小さな○をつけていた
戻る 編 削 Point(5)