「美しいことに理由はいらない」/ベンジャミン
 
何かしら書くものだと注意した
するとその生徒はまるでへいっちゃらな顔で

「だって先生、美しいことに理由はいらないでしょ」と

僕はまさに心臓を射抜かれたような衝撃で
返す言葉をなくしていた

下手な言い訳だとはわかっている
けれどそれが間違いだと言い切ってしまうことが
僕はどうにも悪い気がして

それでも、
それでも何かしら書くものだ

僕は何だかちょっとむきになっていたと思う
どうせテスト業者は機械的に×をつけるし
やっぱり先々のことを考えると
答えはしっかり書くものだ

(美しいことに理由はいらない)

下手な言い訳だとはわかっている

けれど
僕はその見事な空白に、小さな○をつけていた



    
    
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