「 かいり。 」/PULL.
 






一。

 かいりが服を抱えて出て行くのを、あたしは黙って、見ている。「それはもともとあたしのお気に入りの服なのよ!。」かいりの鼻先で、そう言ってやりたい気もするけれど、あたしは言わない。そんなことを言えばあたしはかいりに負けてしまう。だから言わない。言ってはいけない。あたしはかいりがテツメンピと呼ぶこの顔で、やつがこの部屋を出て行くのをただ黙って、見ている、見ているしかあたしには、ない。
 かいりとあたしは今夜、別れるのだから。


二。

「インポオンナ。」
 あの夜かいりはあたしに、そう言った。あたしはかっとなって、かいりに掴みかかり、組み敷い
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