ポケットサイズの世界 (2)/桜 葉一
 
の汚れている少年は、なかなか煙突から出てこないもう1人の少年を心配そうに待っていた。



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少年が「おおかみが来た!」と騒いだので、大人たちは武器を持って外へ飛び出してきたが、そこには狼なんていなく、やっぱり嘘だったかと呆れた顔で少年を睨んでいたが、たしかにそこには神が来ていて、汚れた心の大人たちには見えていなかった。



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彼女の笑顔を見るたび僕の寿命が減るもんだから、僕はいつもジレンマと闘っている。



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祖母の誕生日に買ってきたケーキには、すでに70の小さな穴が空いており、祖母はその穴に向かって必死に息を吹きかけている。
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