絶望/AKiHiCo
 
氷が張る音がしました
睡蓮がその下でそっと開きます
月灯り 星屑 風 そして、僕を
その上に映し載せれば
まるでひとつの世界のよう

輪郭がぼやけて滲んで
それは氷が其れで在ろうとする
行為そのもので、
指で表面をなぞってみます
爪の先にあの日の
星の環が踊り舞って
柔らかに解けた液体が指を刺激

睡蓮よ睡蓮よ
其処から見上げた世界は
美しいのですか、
僕には到底そうは思えません
どうそこから映っているのですか、

答えを訊かないまま
朝が訪れようとしております
仕方がありませんから
氷を割りました
答えが早く訊きたくて。

睡蓮 花びらを 葉を
大きく 大きく 拡げ
茎を長く長く 伸ばす

僕はその様を眺めながら
爪に張り付いていた星の欠片を
払い落としました
そうしている間に睡蓮よ
どうして枯れてしまったのですか、

僕の眼には氷の上に
散らかった睡蓮の花びらが
ただ其れだけが映っておりました

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