虫/ホロウ・シカエルボク
の様に思えた
昨日まで吹き荒んでいた風が今夜は無い
季節が変わる為の儀式は昨日で全て終わったのかもしれない
様々なものが風に浚われて何処かへ消えて行く度に
体躯が幾分かの
血を流した様な気分になる
死というものがこの生の何十年かの蓄積であるのなら
それが今我が許に有っても
少しも不思議なことなど無い
意義を嘆くことを止めたのは
誕生から数えて何千日目の愚考だったのか?
消し滓の様な羽虫がふらふらと落ちる
最後に何を見たのか遺言の代わりに教えておくれ
卓上でやがて灰になる
その名も告げぬままの仄かな虫よ
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