虫/ホロウ・シカエルボク
 


蚤の足取りを辿る形骸化の生業
思考の傷口に沸いた蛆どもが正気を喰らう音が五月蝿い
漆喰の壁に浮かんだ雨漏りの名残が
やがての父母の死体に見えて身震いをする夜
時計の針の様に大人しく生きられない
サクリファイスを予感して
時間から逃れる様な片隅へ蹲る無暦の居住区
住所が幻に思えて
届かない気がして手紙は出さなかった
助けを求めているのではと勘繰られるのが嫌だったのかも
死んだ田園から迷い込んだ
消しゴムの消し滓の様な一匹の羽虫
電灯の紐に縋るさまが余りにも潔い
縋る術を知らぬ者こそが本当の弱者なのだ
手持無沙汰に編んだ指先
何処の何にも触れまいとする愚かな心の様
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