へだたりにあらず/木立 悟
夜を脱ぎ 夜を着
近づいてくる光を聴く
触れるようで触れずにいる
熱のかたちの指先を見る
道に雨があり
曲がり角で消えてゆく
緑のひとつ向こうの緑を
雨はふたたび歩いてゆく
光のなかで眠り
曇のにおいに覚める
大きく不確かな
水の音を聴く
羽を模した器に
夜と午後がさかさまに来て
底にはいつまでも
小さな夕暮れがある
手のひらが 雨をこぼす遠くで
手のひらがまた
雨をこぼし
土は 緑に照らされてゆく
無くなり 現われ 過ぎ去り
滴は滴に落ちてゆく
離れるようで離れない羽
雨の器にひらかれる
戻る 編 削 Point(7)