祈りの季節/松本 卓也
暖かな微笑を浮かべて
僕の話を聞いていた
君が居なくなってから
もう何年たったかな
そろそろ記憶も薄れてきて
君への呼び名でさえも
その通りだったか自信が無い
ただあの屈服した春が訪れるまで
惜しみなく温もりを与えてくれたこと
別れたその日から今までの間
積み重ねた履歴の薄っぺらいこと
悔しいけれど
今でも思い出すだけで
何処にも進めていない
季節が一巡する度に
定量の後悔が循環するだけで
声も顔も曖昧になっていくのに
気持だけは腐らずにいる
かつて君に捧げた詩に
一言も挟めなかった言葉が
何故か今繰り返し
胸に浮かんでくるよ
桜の蕾が静かに芽吹き
穏やかな風を街に運ぶ
あの頃流した涙と
今も止められない涙に
込めた意味は違っていても
願うことは唯一つ
今年もまた君の胸に
温もりが積もりますように
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