さくら さよら さら さら/たちばなまこと
 
きみが少し元気なときに
庭に植えた白梅に
真珠の粒がころころと
それは春の序章とも言える

きみが好きだった春の 前髪が見えて
それはきみの季節とも言えるが
メディアから塗りつけられる春の音(ね)が
きみのおわりばかり 強くなぞる
から
きみのおもかげの手を引いて
散歩に出る
ほら、お花。
抱き上げて香りを教える
ひとさし指が反対向き
あ、しゃ。
鉄橋を揺さぶる京王線の がたん ごとんが
多摩川に響いてゆく
めじろが落とす花びら
花びらにはどれにも
さよならと書いてある

うぐいすを追いかけて
梅の香りの公園へゆく
ほら、うめの花。
背伸びして花を
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