この町/アキラ
何の変哲もない住宅街
築20年以上の家が多くて
いわゆる団塊の世代のマイホームが並ぶ
父が団塊の世代にあたるわたしは
この町に生まれた
入学式のたび桜並木の下で写真を撮った
1番大きな八重桜はなくなってしまったけれど
並木の下の土手では
いつしかわたしより低くなったフェンスを乗り越えて
まだつくしがたくさん摘める
何度もなぞった帰り道で
あの子のことをこっそり待った
面倒くさい顔をされてもドキドキしていたわたしを
あの子が登った枇杷の木が
いつも上からやさしく見ていた
受け取った実は甘酸っぱい初恋の味
どうしようもなく暑い日は
蝉の轟音のあいだを自
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