First Love/円谷一
め、元彼の元へ戻っていった。という、風の噂を聞いた。君の担任の話によると、「父親の転勤による転校」ということだったが、実際のところは分からなかった。
僕の生まれた街は、今は昔の面影がまるでなく、異世界に迷い込んだような気持ちにさせる。君と通い詰めたクラブも潰れてしまった。年に数回帰郷する時、僕は決まってあの頃使ってた自転車に乗って堤防に行って、川の流れとは反対向きに歩く。そしてあの急な坂に差し掛かると自転車に飛び乗り、チリンチリン、と鈴の音をそっと空に響かせる。
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