白雪/ヨルノテガム
暖かくなる少し前のこと
この地方では年に一度あるかないかの雪が
めずらしく降り積もった ここ2、3年で
街の概観が真っ白な大体の景色になることはなかった
家々の夜は、魔法使いの逆鱗に触れたかのように
お伽ばなし模様に変えられてしまった
道や隔たりは姿を消し 木々に積もった綿菓子は
子どもたちの見る夢のそれより大きく膨らんで居座った
全ての景色が僅かな街灯の光ばかりで、
雪の反射であろうか 薄白く浮かび上がった
月のない夜の、雪の照明装置が街を沈黙劇へいざない、
後から後から追いかけてくるように白雪は降る
風という正体が白雪を抱いたまま
目の前で踊りまくって
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