【短歌祭参加作品】十秒後の世界/石畑由紀子
 
 
使い切ることなく無くす消しゴムのように見失った第一話




赤、明滅、遅れて届くサイレンに共鳴をする喉笛の穴




干上がった水たまりは遺跡に似て踏みつけられず進めぬ真昼




ケータイを買い替えるというリセットの帰路 自分の影に背を越されて




cry for the moon たましいの先端を夜に溶き星々と震えて眠れ




「さようなら」 ここは鏡の部屋だから そう微笑ってコーヒー煎れて、朝




十秒後たどり着く先を誰が知ろう 孤独の小指と私は行こう







戻る   Point(10)