ひびきにあらず/
木立 悟
水の鏡の
光ではないところに
呑みこまれながら
呑みこまれずにいる
ふるえがひとつ
羽につながる
旧い言葉が
水をわたる
樹と樹のはざまを
はざまと同じ滴がすぎる
雪の重みに撓う幹
鳥が生まれる場所を指す
緑から緑へ
ひらめきは消える
無音がひとつ
水底をゆく
果てのむこうへ
水はつづく
はじめての息が
雪に書く文字
遠くも近くもわずかに離れ
鳥は鳥のまばたきを聴く
はざまの滴がひとつ動く
鏡のなかを ひとつ動く
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