サイトカイニン/茜井ことは
 
昼の光は公平だ
悪いことだって許してくれそう
誰にもばれない秘密の場所で
ふと思いだした昔の罪を
さらけだしては、みんな前向きになっていく


主婦がふとんを叩いたら
社会人は旅に出る
アイロンの吐くスチームだけが
私に汽車を予感させる



すくすくと育つのは
ベランダのサボテンか
物足りなさか


寒さも感じず
洗濯物を干し終える頃
うとましかった冬でさえ
その尾をつかんでしゃがみたくなる


もはや私は駅でしかなく
錆びゆく鉄筋に気づく脳も無いのだから




助けておくれ
サイトカイニン
微温の空気を受け入れなくちゃ




つぼみがほころび始めたら
今日という日もきっと、また
蓄積していくノスタルジーが
歩幅をここまで狭めてしまうの







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