辻が花/生田
 
小説家の影響が色濃く現れているものがあり、また、そういったものほど評価が良かった。それが気に食わず、詩を書かなくなり、そして不意の気紛れから詩をまた書き始めた矢先、風の死骸に辻が花をみたのは、やり切れない気持ちにさせられるものがあった。
 去った後に何が咲き乱れようと私の知ったところではない。だが現に目の前で咲き始めた花は、生を示すかのように浮き上がる。いくら煙草を喫もうと暗がりに浮く花弁は真であった。真でないのは、それを辻が花と思い呼ぶ私であった。
 それを認めるのにどれだけの時を要したか、辺りが紺色に沈んだころ、影抜きのようにそびえる鉄塔の列は等しく沈黙していた。もう風が死ぬこともない。そっと腰をあげると、ひとひら、花弁が舞い上がり川面へ下った。
戻る   Point(4)