辻が花/生田
 
 河川をまたぎ、田んぼを抜くように鉄塔の並ぶ、その先には落陽。送電線に断ち切られた風、その名残がマリンスノーのように降り積もる。
 十五で姉やは嫁に行き。橋げたに腰かけ、口ずさむ童謡の一節の続く歌詞も、その前の歌詞も思い出せず、同じ節を繰り返す。
 目先に辻が花が揺れていた。点けた煙草の切っ先に、揺れる花をみた。あれは幻の花であるから、と心に言い聞かせ深く煙を喫む。眉根を寄せ見れば、茎は野草、花弁は風の名残に違いなかった。

 辻か花という名を知ったのは、ある小説からであった。
 私が小説の面白さを知り、傾倒したのは、その小説家の著書と出会ったからであった。その所為か、私の詩にはその小説
[次のページ]
戻る   Point(4)