草々/蒼木りん
かつて
私は詩人と呼ばれたが
いまはまったく書いていない
詩をつくらなくても
平気だ
いつまでつくらなくても
この先も平気だろう
なぜなら
いま私を詩人と呼ぶ人はいないからだ
私を
妻とか母とか嫁とか何々さんと呼ぶ人ばかりの中で
いまの私は
飯をつくらないことには罪悪を感じてしまう
掃除をしないことにも
洗濯をためることにも弁当を作らないことにも
会社で仕事ができないことにも
それらのことを平気になる日は
どんななんだろう
幸せとは
どんななんだろう
いまからそれを探す旅に出ます
そんな私を
どうか探してください
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