ひと炊き/佐々木妖精
 
眠れない夜に
眠ってしまった店を想う

焼き魚が食いたくて
冷蔵庫の灯をまさぐるが
プラスチックしか見つからない
ジュースを転がす

傷んだ腹がないている
鍋焼きうどん食おうにも
うちにはまったく土鍋がない
うどん一玉見当たらない

せめて米でも炊いてみよと
炊飯器を覗きこむが
黒猫が眠り込んでやがり
保温してやる

ポーションと漢方の夜食を終え
空き缶を抱きながら
目を閉じて開店を待つ
胃壁が波打つテンポに縛られながら
浅い眠りから抜け出すと
朝焼けはご飯の匂いで満ちていた

見知らぬ首輪
しゃもじ抱えて
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