/渡邉建志
た紐を掴む。玄関に入る。鍵をかける。母がいる。私は母と話す。棚の上に私の毛布があ
る。兎が棚の上に登る。私の毛布の上でもぞもぞする。兎も、人間がどこに毛布をおくかという
ことを分かる知的生命なのだなとおもう。毛布の中にもぐりこんだ兎を毛布ごと私の膝の上に乗
せる。抱えながら話す。温かい。兎は寒かったのだろう。じんわりと温かい。死のうか
*
ザリガニとイルカは1960年高度成長期の日本に亜米利加からもたらされた動物であるが、
その貴重な1匹のザリガニを水槽に入れて運んできたのが何を隠そう俺であった。それはこんな
感じだった。亜米利加のどこかの川で、ザリガニを巨大ピンセ
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