鬼のいない場所/因子
その写真のなかに確かに僕らしきものはいる
その写真のなかに確かに彼女は僕らしきものを抱いて笑窪をつくっている
誰に訊いてもその僕らしきものは僕なのであって
しかし僕にそれを確かめる術はない
そこにあるのが僕以外のなにかおそろしい存在であったとしても
僕はこいつを僕だと認識させられる
血液型を調べても遺伝子を調べても確かに僕は彼女の一部から出てきたのであって
誰に訊いてもそれは確かなのであって
ひとつ、不公平だと思うのは 僕が彼女の一部だったということを
僕だけがしらないという、どうしようもないことなのだ
ひとつ、望むことがあるとしたら
鬼のいない場所を視認
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