『虹のように犬のように、』/川村 透
 
--僕の、美しい人の話をしよう。

さっきまで、おしっこみたいな雨が降っていたのに
太陽の奴ったら
まるで君の妹のように、甘酸っぱい笑みをうかべて
うそみたいにけろっと晴れちまう、
なんて。

僕のまつげをちりちりと焦がす
レモンの始まった日、七月一日
君はフリルのついた傘をくるくる、回すばかりで
黄色い、空の妹と、まぶしそうに、ウインクをかわす
のに夢中で、僕のいう事には生返事で
ちっとも聞いてくれないんだ。


紫陽花は、青年のようにうつむいて。


--僕の、美しい獣の話をしよう。

さっきまで花のように微笑んでいたはずなのに
君も僕も、日傘の陰に
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