星の王子さまについて/渡邉建志
ここには自分は大人にはならないぞという宣言が書かれているように思われてならないが、ならば何になろうというのであろうか。子どものままでいよう、というのであればそれは必然的に永遠のモラトリアムに至る。「目に見えないもの」を見ようとし続けると、「目に見えるもの」である現実の選択から目をそらす結果に陥る。子どもの目にこだわることにより、大人の目を失う。
「星の王子さま」という美しい書にはそのような陥穽が潜んでおり、これは「思春期という難しい時期に立った人達」が触れるべき書では決してないと思われる。
このような結論に至らざるを得ない彼のことを、いかにもかわいそうだ、と僕は考えます。
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