卒業式/たもつ
父は毎日仕事で帰りが遅く
平日は構ってもらえなかった
父は日曜日になるとキャッチボールをしたがり
僕はよく公園に連れて行かれた
普段からあまり活発な方ではなかったので
あまり楽しくはなかったし
実際に楽しそうには見えなかっただろう
それよりも僕は父の布団に入ることが好きだった
休みの日は早起きして父の布団にもぐりこんだ
良い匂いがした
いま思えば体から分泌される汗とか
そんな類の匂いだったわけだけれど
丁度良い温かさが気持ちよかった
そんなところまで遺伝したのだろうか
休みの日になると娘は朝早く起きて
布団にもぐりこんでくる
正確にいうと僕の、ではなく
妻の布団の中なのだけれど
いい年して恥ずかしいね
とからかっても
知らん顔で寝たふりをする
いい年して恥ずかしいね
いつものようにからかうと
これで最後にするから
小さな声で返事があった
そんな最後の日が僕にもあったはずだった
娘のほっぺたを突っついてる妻にも
今度の火曜日、卒業式
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