さかな/折釘
 
る憧憬
さかなよ、お前は
いつまた痴人の上にすべてを捌かれてしまうのか
塩漬けにされればまだましな
黒い手に無感動なままに開かれ干され鞣される姿

さかな
それは 見えず 動かず、
誰にも、語らず 聞こえない

歪んだ背骨の訳も知らずのびのびと泳ぎ
お前が海面にうっかり近づいたばかりに
今また見ず知らずの喜びに飛び跳ねる
さかな
そのとき、私はお前を釣り上げた桟橋から
目の前の闇との葛藤の果てにこんどこそ網を打って
世界中から一網打尽に奪い去りたい



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