ネジ台通り/佐々宝砂
 
サンバのリズムで彼女は案内する、
タタタ、タンタ、タタタ、タンタ
広がるフレアスカートは真っ赤、
熱気のみなぎる裏通りは、
これでも充分には裏でないらしい。
粘っこいグリースの臭い、
不意に鼻をくすぐる香ばしいコーヒー、
売り子の声、声、声、足音、足音、足音、
タ、タ、タ、ターン、タ、タ、タ、ターン、
もしかしたらサルサのリズムかもしれないがよくわからない、
陽気でやかましいのは確かで、
ネジ台通りにようこそ!
叫んでいるのは売り子だけではなくて、
叫んでいるのはネジ台通りのすべて、
緑、黄色、赤、青、
色彩のすべては原色で、
目眩を起こした三半規管をさらに震わせる
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