百合/たもつ
 
街外れのバス操車場の裏に
遊園地はひっそりとあった
中心には音楽を鳴らしながら上へと向かう
ゴンドラのようなものがあった
一番高いところに着いても
近くにある民家の壁や窓しか見えなかった
他には狭い敷地をレールで一周する乗り物や
ロープと丸太で作られた簡単な遊具や
ウサギなどの小動物を触れる広場
などがあるくらいだった
遊園地に連れて行って、と
街の子どもはみな親にせがむけれど
一回行ってしまうと他の楽しい遊びに夢中になった
平日は人影もまばらだった
休日になると大人たちで少し賑わった
乗り物の操作をすることができるのだった
大人たちは列を作って自分の順番を待った
子どものころの
つまらない、という思い出しかないのに
大切なものを愛おしむような手つきで
スイッチを押した
天候の悪い日は休園だった
古びた乗り物に雨はよくなじんだ
誰が世話をしているのか
夏にたくさんの百合が咲く一画があった
勝手に生えているのかもしれなかった


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