酔鯨/草野大悟
 
空や海の碧に染まず
ただよう白鳥のように
かっこよくもなく
蝶々のように
ダッタン海峡もとべず
かといって
酔いどれ船に乗る勇気もなく
まして
悪魔の風船をとばしたり
大地の商人になるなどの
気概もない

などと
ぶつくさ
考えていたら
長年共生している
どうみてもヤマトヌマエビにしかみえない
自称クルマエビが
うきゃうきゃ笑いながら
まとわりついてきて
言うんだ

いいんじゃない
それで
わたくしが
いるんだから

そうだよな
いいんだよな
それで

と思いながらおれは
ふーっと
ひとつ
小さめの潮をふく

 
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